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ただ純粋に前を見ていて・・・

思いつくまま ただひたすら 虚構を綴っていきます・・・・・・・・・・・・
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「俺が三尾家の人間じゃないのは本当だよ」


キミが兄弟じゃなくても一緒に居ると約束してくれたから、正直に話した。

名も無き木の下で 初めて出会った日のこと。

三尾になんらかの呪縛をかけられ、記憶を細工されたこと。

勿論、キミを手に入れる打算は除いてだけれど。


「父さんが何故…?」


首を横に振る。その理由は全く思い当たらない。


「それに私達、双子にしか見えないんだけど?」


何度目かの問いにキミは苦笑していた。

それに肩を竦めて答える。


「三尾のヤツ、帰ってきたら問いたださないとな」


そうは言っても かれこれ6年ほど行方知れずなのだが…


「三尾のヤツだなんて…」


ぶつぶつ不満そうだけれど、もはや誰が「親父」などと呼ぶものかっ!


「白、とりあえず帰ろう」

キミの背をそっと促した。

きみを手に帰れる幸運をしっとり噛み締めながら…



しばらくは ゆっくりキミと過ごしたい。

三尾に邪魔されないうちに キミを…




キミが居ればそれでいい。キミはただ純粋に前を見ていて…
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「俺は 俺だよ」


嘲るようにそう言ったけれど、正直 それ以上の答えが思い浮かばなかった。

思い出せない。キミに会うまで、どこで何をしていたのか…

これも三尾の術のせいなのだろうか。


「そんなの答えになってないっ!お願い、ちゃんと教えてよっ!」


必死に問うキミが ただ愛しかった。

不安に怯えながらも 目を反らさず向き合ってくれる キミの想いが嬉しかった。

でも……


「俺が兄弟じゃなかったら 白はどうするの?」


重要なのはそこ。


「先に聞いたのは私だよっ」


だって、キミの答え次第なんだもの…


「ねぇ、教えて?兄弟じゃなかったら、白は俺と一緒に居てくれない?」


三尾の呪縛が解けた今、ようやくキミを手に入れられる。

いつも通り 手段など選ばない。

でも、できれば…泣き顔は見たくは無いから…

キミの夢だけは守ってあげたいから…


「そんなの決まってるじゃない。

…兄弟じゃなくても一緒にいたい気持ちは変わらないよ」



その言葉を聞いたとき、本当の意味で三尾の呪縛が解けた気がした。

涙腺が壊れたように流れる涙を 誰も止めはしなかった。




キミと一緒に未来を歩かせてください…

「…俺たちは 兄弟なんかじゃない」


自分に言い聞かせるように もう一度言った。

三尾が植えつけた偽りの記憶から 完全に抜け出すために…


「わ…私たち、こんなに似てるのに…」


そう。顔のパーツも身体のパーツも声も良く似てる。

他人だと証明することの方が難しいに違いない。

…でも、キミもなにか気づいてる。

さっきより 否定の言葉が弱くなってるよ。


「俺は三尾の人間じゃない」


だから、三尾に遠慮することなんかないんだ…

欲しければ摘み取ればいい。

白い花を 黒い手で…


「白が居ればなんにもいらないよ」


キミの目尻は真っ赤に滲んでいて 心が沈んだ。

それが痛くて そっとキミの頬に伸ばした手は するりとかわされる。


「訳わかんないよ…。じゃぁ、黒は三尾家の遠縁かなにかなの?」


必死に紡ぐ言葉はたどたどしい。

けれどその目には明らかな怯えが走っている。それは本能ゆえだろうか。




三尾の呪縛のほころびが じんわりと広がってゆく。
タイムリミットまであと僅か…

三尾は…キミの親父は

キミを贄(にえ)とし 俺を捕らえさせた。

キミはそれを知っていたのか 知らなかったのか…

今となってはどうでもいいことだけれど。




社に足を踏み入れた瞬間、己の浅はかさを呪った。

眩い光が一直線に飛来する。

ほんの一瞬のこと。

でも、咎は施行された。

俺は意識を失い、記憶を失った…





その翌日から俺たちは双子の兄弟として 社(やしろ)で生活を始めた。

三尾が何を望んで こんなふざけた記憶を俺たちに植え込んだのかはわからない。

わかりたくもない。

ただ、俺はキミなくして生きていけなくなった。

名も無き木の下でキミと出会ったとき、己の咎は始まった。



欲しいものは なんでも容易く手に入れてきた。

だからその時も なんの躊躇いも無く キミを手に入れた。

キミは社に運命を縛られていた。

己以外の色に染まっていたキミに激しい嫉妬を覚え、

それをぶった切る為にキミの社まで付いて行った。

今に思えば それはとても浅はかな行動だった・・・



キミとの出会いは 偶然じゃなかった。

三尾が張り巡らせた甘美な罠に、まんまと嵌まり込み

キミ共々 社の呪縛に飲み込まれてしまったんだ・・・

虚構短文詩「キミの涙」

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